最高人民法院、商標権に係る行政事件審理についての規定を発表

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最高人民法院、商標権に係る行政事件審理についての規定を発表、商標法の一部条文をさらに明確化

中国で急増する知的財産権に係る行政事件。その中でも多くを占める商標権に係る行政事件審理の指針となる新たな規定が最高人民法院によって公布された。
これは、2017年1月10日に公布された≪商標権の権利付与と権利確認の行政事件審理に係る若干の問題についての規定≫(以下、「本規定」という)で、2017年3月1日より施行される。
行政事件に関連する重要な問題及び審判実務上困難な点を明確化するとともに、商標法において厳密に定義されていない内容を補完するものにもなっているため、十分な把握が必要だ。

 

以下、最高人民法院がウェブサイト上で発表した記者会見での質疑応答に基づき、そのポイントを見ていきたい。

 

本規定制定の背景

本規定の対象となる行政事件とは、国家工商行政管理総局商標評審委員会による商標拒絶不服審判、商標不登録不服審判、商標取消不服審判、商標の無効宣告及び無効決定不服審判等の行政行為を不服として人民法院に訴えを提起する行政事件を含む。近年、商標権の付与と権利確認に係る事件数は急増しており、北京知識産権法院が2015年に受理した一審事件7545件のうち、73%を占めた。最高人民法院は早くからこれらの商標関連事件を重視し、2010年には≪商標権の権利付与と権利確認の行政事件審理に係る若干の問題についての意見≫を公布しているが、これは司法解釈ではなくあくまで指導的な見解を示す通達に過ぎなかったため、事件を審理する際に法律根拠として直接援用することができなかった。本規定はこの2010年の通達の重要部分をベースにさらに顕著性の判断や三年不使用取消に係る内容などを加え、さらに一部条文を改正して司法の場での適用に耐えうるものとしている。

 

本規定において注意すべき内容

「容易に混同を生じさせる」の判断要素(第12条)

現行の商標法第57条では、商標権侵害の要件として「(二)商標登録者の許諾を得ずに、同一の商品にその登録商標と類似の商標を使用し、又は類似の商品にその登録商標と同一若しくは類似の商標を使用し、容易に混同を生じさせること。」と定めている。
本規定第12条ではこの「容易に混同を生じさせる」可能性の判断方法を明確化しており、商標のマークの類似度・商品の類似度及び保護を求める商標の顕著性及び知名度・関連する公衆の注意度等を全て「容易に混同を生じさせる可能性」の判断要素とし、これらは相互に影響していると強調している。また同条第2項において出願人の意図や実際の混同の証拠はあくまで参考要素であると定めた。
本規定第12条は商標法第13条第2項の未登録著名商標の保護に対するものであるが、実際は、商標法第30条の先登録商標の保護における混同の可能性の判断、商標法32条における先に存在する権利(文字など)の保護についての判断にも適用されると考えられる。

 

先に存在する権利との関係(第18条~第22条)

商標法第32条は「商標登録出願は他人の先に存在する権利を侵害してはならない。」と定めているが、本規定では「先に存在する権利」を著作権、氏名権、屋号、キャラクターイメージの4つとしている。本規定第20条第2項では氏名権について筆名・芸名・訳名などの特定の名称についても、その特定の名称が一定の知名度を得ており、当該の自然人と安定した対応関係を有し、関連する公衆がその特定の名称により当該の自然人を指す場合、人民法院はこれを支持すると定めており、直近の「マイケル・ジョーダン」商標の使用差止の判例により同項は外国の自然人にも適用されると考えられる。
また、本規定第22条第2項は、著作権の保護期限内にある作品について、作品名称・作品中のキャラクター名称などが比較的高い知名度を有しており、関連商品上に商標として使用したとき、その権利者の許可を得ている若しくは権利者と特定の関係にあるなどと関連する公衆に容易に誤認させ、当事者がこのことを以って先に権益を有していると主張する場合、人民法院はこれを支持するとしている。実務上、既に「ハリー・ポッター」など著名な作品名称の保護に成功していることから、この流れを以って社会にプラスの効果を与えたい考えだが、同時に作品名称・キャラクター名称の保護については大衆による社会の公共文化資源の正当な使用という観点から、度合いを慎重に図りつつ進めるべきとも表明している。

 

訴訟の効率向上(第30条)

現行の行政訴訟の枠組みでは、人民法院は行政訴訟において直接商標の効力を認定することはできず、商標評審委員会が改めて審決を行うよう判決を下すことができるのみである。当事者は商標評審委員会の裁決に対しさらに行政訴訟を行う可能性があり、結局訴訟が堂々巡りになるという現象が生じていた。これによる商標権の付与・権利確認の効率低下を防ぐため、本規定第30条では、「人民法院の効力を生じた裁判により、関連する事実及び法の適用について既に明らかな認定が下され、商標評審委員会が当該効力を生じた裁判に基づいて改めて下した審決について相手方又は利害関係者が訴えを提起するとき、人民法院は、法に基づき受理しない旨の決定を行う。既に受理された場合は、訴えを棄却する旨の決定を行う。」と定めている。

 

 

本規定は多くの重要なポイントを含んでいるが、世間的に目を引いているのは、かねてより国内外の企業や著名人が悩まされてきたキャラクター名や芸名などの冒認出願問題。本規定により顕著な状況改善が見られるのか、動向に注目したい。

 

 

(2017/1/26 日本アイアール A・U)

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