2016年(10~12月)の中国商標ニュースです。

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BMW社が商標権侵害訴え勝訴、中国の知財保護意識に変化か

このほど、上海知識産権法院はBMW社(中国語名:宝馬公司)が中国で起こしていた商標権侵害訴訟につき、BMW社の主張を認め、被告の周楽琴、徳国宝馬集団(国際)控股有限公司(以下、徳馬集団)、上海創佳服飾有限公司に対し商標権侵害の停止と300万元の損害賠償を申し渡した。2016年12月24日付の毎日経済新聞は、このたびのBMW社の勝訴は、海外ブランドの中国における知的財産権保護の問題が重視されてきたことを象徴していると報じている。

 

被告の周楽琴は2008年に徳馬集団を設立、「BMN」等の商標を登録もしくは買い取りなどの方法で入手し、上海創佳服飾有限公司にライセンスする方式で「BMN」ブランドへの加盟システムを構築した。その後も徳馬集団と上海創佳は図形の構成を変えたり、色彩を変えたりするかたちで、徐々にマークをBMW社のものに近づけていき、それらの商標を用いて2009年から7年間、全国で洋服や帽子、靴などの商品を売りさばいてきたのである。 
BMW社は2001年から「BMW lifestyle」のブランド名を用い中国でアパレル商品の販売を行っている。しかし、本件の被告「徳馬集団」は名前こそ似ているもののBMW社の同事業とは全くの無関係。上海知的財産法院は、三被告がBMW社との関係を消費者に想起させ、誤同を招くことを狙ったものとして商標権侵害と不正競争行為を構成したと判断。BMW社の著名度を利用するものとして明らかな悪意が存在し、侵害行為の期間が長く、地域も広範に亘り、侵害の規模が大きいことを鑑み、損害賠償300万元を命じた。
300万元は中国の商標法において損害額や侵害者の利益額、使用料等が確定できない場合の賠償額の最高限度額である。実際の被告の権利侵害による所得は300万元を遥かに上回っているようだが、このあたりは侵害者の利益額や自社の損失額を立証することの困難さが現れていると言えるであろう。

 

これまで外資系企業、特に著名自動車メーカーは中国で商標権侵害に悩まされ続けてきた。またその中でも今回のケースのように、商標権の取得過程自体は合法でも、その後の使用過程において徐々に商標の形態を変えるなどして著名ブランドとの関連を想起させようとする侵害例が少なくない。このような例については従来地方裁判所等では侵害が認められない可能性も少なからずあったのが事実だが、今回の判例が今後の同様の事例の判断にプラスの影響を与えることを願いたい。
(日本アイアール A・U)

北京知識産権利法院発足以来の最高額、商標権侵害で約1億6000万円の損害賠償判決

このほど、北京知識産権法院(北京知的財産裁判所)が、商標専用権の紛争案件について、被告に1000万元(約1億6000万円)の賠償を命ずる最終判決を下した。11月19日付の新華網によると、これは北京知識産権法院発足以来、商標権侵害の案件では最高の賠償金額となる。
原告の美巣集団股份公司(以下、「美巣」)は、「工業用粘着剤・工業用にかわ」などの商品で「墻錮」の商標を登録し使用している商標専用権者であり、市場での当該商標の知名度は高い。被告の北京秀潔建材新興有限公司(以下、「秀潔」)は許諾を得ずに、自らが製造・販売する同類の商品に目立つ形で「秀潔墻錮」など「墻錮」を用いた文字を使用し、権利侵害を構成している。
法院は審理の結果、「墻錮」は当該業種で俗に使われる汎用名称ではなく、被告が上述の文字を商品の外装の目立つ位置に使用し、字体も大きいことから、商標の意味で使用しており、原告の登録商標専用権を侵害していると認定した。
北京信報は、美巣と異なり、秀潔が関連書類の提出命令に応じなかったことも、秀潔側に厳しい判決が下った原因の一つであると報じている。
賠償額の大きさが世間を震撼させている本件だが、知的財産権保護に注力することを明言している中国のこと、今後より厳しい措置が取られる事案も増えそうだ。
(日本アイアール A・U)

第2の「新華字典」は商標権侵害?老舗出版社の商務印書館が保護求め訴え

我々の日常に欠かすことのできない存在である辞典。その名称は似ているようでありながら、よく見ると出版元ごとに工夫を凝らした個性的なネーミングになっている。当然しっかり商標登録もされている。
中国においてももちろんさまざまな種類の辞書が存在し、中でも赤い表紙の下側に緑の波上の模様が施された「新華字典」は、日本人の中国語学習者にとっても親しみのあるものとなっている。しかし今、その「新華字典」をめぐる知的財産権侵害に係る訴訟が注目を集めている。

 

2016年10月26日付の中国知的財産報によると、商務印書館有限公司(以下、「商務印書館」)は、華語教学出版社有限責任公司(以下、「華語出版社」)が無断で≪新華字典≫の未登録著名商標と同一又は類似する商標を使用し、外装も同一又は類似の辞書の生産・販売を行ったことについて、商標権侵害及び不正競争行為を停止し、経済損失計340万元を賠償するよう求め、このほど北京知識産権法院で審理が行われた。

 

商務印書館いわく、被告の華語出版社はこれまでにも無断で「実用≪新華字典≫」(最新版)など≪新華字典≫を銘打った辞典を販売、その装丁も≪新華字典≫(第11版)と極めて似ており、深刻な市場での混同を引き起こしやすいとのこと。華語出版社の行為は商務印書館が「新華字典」について有する未登録著名商標権を侵害し、また≪新華字典≫(第11版)特有の外装、装丁権を侵しているという。
商務印書館のさらなる訴えによると、1957年に同社は中国初の現代中国語字典として≪新華字典≫を出版、以後第11版まで版を重ねている。2010年~2015年の≪新華字典≫のシェアは平均50%を超えており、≪新華字典≫は辞書界における優良ブランドとして周知の字典ブランドとなり、「新華字典」は事実上商標の機能を発揮し、商品の出所が商務印書館であることを安定して示している。このため、商務印書館は「新華字典」が未登録著名商標を構成するとして、法院にその認定を求め、華語出版社に対し商標権侵害及び不正競争行為の停止を求めたのである。

 

これに対し被告の華語出版社は、「新華字典」は既に辞書の普及名称となっており、商務印書館が他人の正当な使用を禁止する権利は無く、商標権益を主張する権利もないと反論する。
また、版によって編纂者が異なることから、これらの編纂者が≪新華字典≫の作者であり、商務印書館は出版権を有するのみで、≪新華字典≫の商標権益を主張する権利はないとも主張している。
華語出版社によると、≪新華字典≫の命名・編纂・出版はすべて識字率の向上を目的に国家主導のもと行われたもので、編纂、出版すべてにおいて国家の意思を体現している。つまり元々は国家プロジェクトであるため、商品の出所表示機能は有していない
華語出版社がさらに言うには、「新華」は「新中国」を意味し、その歴史的背景から「新華字典」は新中国発足後の中国における中国語辞書に用いられているものを指す。少なくとも三十数社の出版社が百種類以上の「新華字典」を書名とする辞書類の図書を出版していることに示されるように、≪新華字典≫は既に辞書の普及名称となっているとのことだ。

 

この商標権の問題については、商務印書館は既に「新華」+図形の結合商標を出願し、既に受理通知書を受領していることも主張している。

 

本案件はさらに外装や装丁に関する権利も争点になっているが、華語出版社は、≪新華字典≫11版は業界でよくある外装・装丁を使用しているに過ぎず、特に外装・装丁に関する権利を有していないため、商務印書館の権益を侵害してはいないと主張する。

 

また10月23日付の新京報によると、不正競争について、被告の華語出版社は、商務印書館の出版する≪新華字典≫(第11版)は顕著性および独創性を具備しておらず、侵害を構成しないとしている。

 

数々の興味深い争点をはらんだ本案件であるが、審理は続行中である。今後の動向に注目したい。
(日本アイアール A・U)


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