記述的文字からなる商標は登録になる前から元々の商品の形状、品質、原料、機能、用途、重量、数量及びその他の特徴等を表す意味を持っています。例えば、別会社が、その経営活動において、自社の商品の特徴を説明するために他人の登録商標の中の記述的文字と同一また類似のものを使用したいという場合があります。このケースは特定の法律的条件を満たせば、正当な記述的使用となり、他人の登録商標への権利侵害と認定されません。
中国における係争例
判例を見てみましょう。原告である熊仔アニメ会社は、「熊仔xiongzai」(登録番号:934436号)と「熊仔」(登録番号:4145372号)という2件の登録商標(「熊仔」は「小熊」の意味)を持っています。許可商品は第30類のビスケットや菓子等です。被告はスターバックス店です。原告は、被告の販売する「熊仔キャラメルヘーゼルナッツケーキ」がその商標権への侵害に該当するという理由で、被告を提訴しました。裁判所は第一審の審決の中で、「商標法における商標としての使用とは、商業活動において商品の出所表示機能を有する使用の仕方である。商品の形状、品質、原料、機能、用途、重量、数量及びその他の特徴を表すための使用行為は、商標としての使用とは見なされない。被告は、その店舗の看板、価格表、店内の宣伝ポスターと装飾、商品包装及びレシートにおいて、被告自身が保有し、且つ消費者によく知られている商標を大量に使用していた。被疑商品である熊仔キャラメルヘーゼルナッツケーキは確かにクマの形をしているヘーゼルナッツショートケーキであるため、被告はそのように命名した。従って、熊仔という文字の使用は、商品の形状を表すための記述的使用に該当し、合理的な記述的使用の範囲を超えず、関連公衆に商品の出所への混同を引き起こすことがないため、正当な使用行為と見なされる」という意見を述べて、被告の使用行為が原告の商標権への侵害とは認定せず、原告の請求を却下しました。原告は上訴したものの、第二審でもその判断を覆すことは出来ませんでした。
商標としての使用に該当するか否か?
商標権侵害案件の中で、商標権侵害を認定するために重要となる前提の一つは、被告の使用行為は商標としての使用に該当するか否か、ということです。被告は、「被疑標識の使用は商標的使用ではなく、合理的な使用である」と抗弁することがよくあります。上記の判例が示すように、経営者がその商品または役務を説明するために他人の記述的文字からなる商標を合理的な方式で使用する行為は権利侵害になりません。例えば、自分の名前や住所を表すための使用、商品の共通名称又は商品または役務の特徴を説明するための使用等、このような記述的使用が商標権侵害に当たらない理由は、記述的文字が商標として登録される前から当該記述的文字が既に商品の特徴を表す意味を持っており、何人たりともそれを独占することができないからです。従って、何人であっても正当な目的に基づいて、商標の中の記述的内容を合理的に使用することができ、商標の権利者はそれを阻止する権原はありません。
商標権侵害に該当しないよう注意するべきことは?
このような記述的使用にも制限があり、勝手に他人の登録商標を使用できる訳ではありません。もし合理的な使用範囲を超えれば、商標権侵害に該当しますので、注意が必要です。他人の登録商標の中の記述的文字で自社の商品を説明したい場合、他人の商標権への侵害を避けるよう、ご使用の前に、使用意図や使用方法及び使用効果等の面からご留意ください。まず、使用意図において、自社の商品を説明したいという善意の目的に基づくことです。次に、使用方式において、当該記述的文字が製品の形状や特徴等の説明に不可欠ということだけでなく、その使用方法も正当かつ合理的でなければなりません。最後に、使用効果について、自社の登録商標を付すことで他人の登録商標と明確に区別させること、及び消費者の混同をできるだけ避けることです。既に使用中の標識が訴えられた場合、前述3つの面から自身の使用行為の正当性を強調し抗弁することができます。