中国『商標法』第八条の規定に「自然人、法人又はその他の組織の商品を他人の商品と区別することができる文字、図形、アルファベット、数字、立体的形状、色彩の組合せ及び音声等、並びにこれらの要素の組合せを含む標章は、すべて商標として登録出願することができる。」とあります。
この条文には二つの要点があり、一つは、商標は自分の商品・役務を他人の商品・役務と区別する機能を果たすべきです。すなわち、商標は識別力を有していなければなりません。もう一つは、文字、図形、アルファベット、数字のような従来使われてきた要素に限らず、立体的形状、色彩の組合せ、音声なども商標を構成する要素になります。
これら新しいタイプの商標は、「非伝統的商標」と呼ばれています。
中国では、非伝統的商標の出願件数が増えてきた背景の下、経営主体に非伝統的商標の識別性に関する審査基準への理解を深め、非伝統的商標を正確に登録・使用するよう指導するため、中国国家知識産権局(CNIPR)は『非伝統的商標の識別性に関するガイドライン』を発表しました。
ここでは、ガイドラインの主要な内容を抜粋して2回に分けてご紹介したいと思います。
立体商標の識別性について
実務上、商品自体の立体的な形状、商品包装または容器の立体的な形状などを立体商標として出願することが多いですが、関連公衆がこのような立体的な形状を商品の一部、商品自体又は商品の包装等に認識しやすい事実があります。実体審査では、このような立体的な形状が製造元を区別する機能を果たせないと思われ、商標としての識別性が認められないケースが多いです。理解を深めるため、CNIPRが識別性に欠ける立体商標の例を6つ挙げました。
1.出願商標が指定商品自体の立体的な形状である場合
出願商標が指定商品自体の立体的な形状である場合、商品の外観、装飾等と認識されやすいため、関連公衆に商標として認識されず、商標としての顕著な特徴を有していないと思われます。
例えば、
2.出願商標が商品の一部の立体的な形状であり、商品を構成する一部分だと思われ、製造元を区別するための標識として認識し難い場合
出願商標が商品の一部の立体的な形状であり、商品を構成する一部分だと思われ、製造元を区別するための標識として認識し難い場合、商標としての顕著な特徴を有していないと思われます。
例えば、
3.出願商標が商品の包装または容器の立体的な形状である場合
出願商標が商品の包装または容器の立体的な形状である場合、商品の包装または容器に認識されやすいため、関連公衆に商標として認識されず、商標としての顕著な特徴を有していないと思われます。
例えば、
4.出願商標が簡単又は普通の立体的な形状、装飾機能を果たす立体的な形状である場合
出願商標が簡単又は普通の立体的な形状、装飾機能を果たす立体的な形状である場合、普通の商品の模様や装飾と認識されやすいため、製造元を区別するための標識として認識し難いです。
例えば、
5.出願商標がサービス業で関連サービスを提供するために使用される汎用または一般的な物品の立体的な形状である場合
出願商標がサービス業で関連サービスを提供するために使用される汎用または一般的な物品の立体的な形状である場合、サービス内容等に認識されやすいため、関連公衆に商標として認識されず、商標としての顕著な特徴を有していないと思われます。
例えば、
6.出願商標が識別性に欠ける立体的な形状と識別性のある文字、アルファベット等の平面要素を組み合わせて構成する場合
出願商標が識別性に欠ける立体的な形状と識別性のある文字、アルファベット等の平面要素を組み合わせて構成する場合、商標全体では識別性を有すると思われますが、出願人が識別性のない立体的な形状部分に対してディスクレームする必要があり、識別性のない立体的な形状部分については権利を主張することができません。
ただ、平面要素が商標全体に占める割合が小さすぎたり、読みにくい位置にあったり、商品の装飾等に認識されやすい場合、立体商標全体が識別性に欠けると見なされます。
例えば、
まとめ
以上、今回は立体商標の識別性について解説しました。
次回は色彩のみからなる商標及び音商標の識別性について解説いたします。楽しみにお待ちください。