広告、販売促進、事業管理等のような『区分表』における第35類の役務が企業の管理や商品の販売と深く関わっています。特に一部の国において「商品の小売、卸売」サービスを受け入れていることもあり、ここ数年、インターネット上では第35類商標の「万能論」が囁かれています。「万能論」の影響を受けて、第35類における商標出願が激増しており、多くの生産企業が盲目的に出願するという現象が生じています。
しかし、第35類商標は本当に万能でしょうか。近ごろ、北京知識産権法院が第35類商標の不使用取消に関する案件を審理しました。裁判所の意見を見てみましょう。
中国での実例を見てみましょう
第三者が第35類の役務において登録された商標第6436450号「威而徳DE WILD及び図形」に対し不使用取消審判を提起しました。不使用取消審判及び不服審判を経て、商標が国家知識産権局により取り消されました。その後、商標権利者であるA社が国家知識産権局の取消決定に承服せず提訴しました。審理を経て、北京知識産権法院は以下の意見を述べました。
第35類の役務の目的は、他人に事業の経営・管理等に関する助言や協力を提供する、または、他人に広告、プロモーションサービスを提供する、他人商品の販売量を向上させるために助言、企画、コンサルティングを提供することです。ということで、第35類の役務の最も重要な特徴は、他人のために関連サービスを提供することで、単に自社製品を販売することや他人の製品を販売し、差額を徴収することは、他人のためのサービスとは思えません。
本件において、A社の提出した証拠は、製品の輸出行為があったことは証明できますが、他人の商品の販売量を向上させるために輸出入の代行サービスを提供したことを証明できず、他人の商品の販売量を向上させるために助言、企画、コンサルティングを提供したことも証明できません。
また、A社が第7類「芝刈り機、粉砕機」等の商品においても同商標を持っていることと、提出された製品カタログ、宣伝内容等を合わせて考えれば、商標の使用は第35類の役務に対するものではなく、「芝刈り機、粉砕機」等の商品に対するものだと分かります。
以上の理由に基づき、北京知識産権法院は当該商標の取消決定を維持しました。
中国では商品の区分において商標権を取得すれば充分
上記判例が示したように自社製品の販売、宣伝証拠を国家知識産権局、裁判所に提出しても、第35類の役務に対する使用証拠として認められません。国家知識産権局が2022年12月7日に発表した『第35類の役務における商標の登録と使用に関するガイドライン』にも明記されておりますが、「第35類の役務の最も重要な特徴は、他人のために関連サービスを提供することであり、権利者自身のために事業の経営・管理、広告宣伝等を行うことではありません。生産企業が自社の商品を販売、宣伝するために商標を使用することは、第35類の役務に対する使用として認められません。」ということで、生産企業として、自社の製品を販売、宣伝するためであれば、商品の区分において商標権を取得すれば充分です。
他人のために関連サービスを提供しなければ、第35類において商標権を取得したとしても、将来不使用取消審判が提起された場合、その登録を維持できません。
今後の課題
しかし、中国では、商品の小売、卸売サービスが受け入れられておらず、『区分表』の規定によって、第35類の役務は第1-34類の商品と類似関係がないため、生産企業が第35類において商標権を取得しなければ、他人に取られてしまう可能性が考えられます。抜け駆け登録を防ぐために第35類において商標権を取得する生産企業が多いです。
どのようにして第35類の無用の登録を減らし、同時に権利者の権利を全面的に保護できるかが今後の課題です。