中国商標を大量に出願する必要が生じる時もある
企業が経営活動をする際、通常、商標が必要となります。業務の規模拡大に伴い、メインブランドの保護範囲の拡大やサブブランド、新ブランドの保護に関する需要が出てきて、大量に出願する必要が生じる可能性があります。
しかし、同一商標を同時に多くの区分で出願することや異なる商標を大量に出願すること、同一出願人が大量な商標を保有するなどのような場合、悪意のある不正出願と認定される可能性があります。その場合、登録商標が無効にされるリスクがあるだけではなく、その後に行う出願に対しても拒絶や異議申立のリスクをもたらしてしまいます。
ただ、悪意のある不正出願に係る審査の中で、商標の数量がポイントの一つであるとはいえ、数量が多いと不正出願に該当するという訳ではありません。
判例を見てみましょう
判例を見てみましょう。A社は第34類の「タバコ」等の商品における登録商標「招財猫」(以下は「係争商標」をいう)の権利者です。B社は、悪意のある不正出願という理由で係争商標に対し無効審判請求を提出しましたが、無効審判請求及び訴訟の第一審において支持を得られませんでした。B社が第一審の判決を不服として、北京市高級人民法院に上訴しました。第二審において、北京市高級人民法院は異なる意見を出しました。北京市高級人民法院は、A社が複数の区分において、300件以上の商標を出願したことは、正常な経営における需要に基づく出願ではないと思われ、それに対して、A社が大量出願の原因について、合理的な理由を提供しなかったため、係争商標が不正出願に該当するという判決を下しました。
その後、A社が第二審の判決を不服とし、最高人民法院に再審を提起しました。再審では、A社は係争商標及びその他の保有商標の使用証拠、受賞状況、関連製品の販売データ、契約書や領収書等を提供したほか、防衛用の商標の出願方策・出願状況についても説明しました。審理を経て、最高人民法院は、「悪意のある不正出願に該当するかどうかを判断するには、出願人企業の経営状況等に踏まえて、出願商標を使用する意図、合理性または正当性の有無を総合的に考慮すべきだ。A社が提出した証拠から、係争商標が悪意のある不正出願に当たらない」という判決を下しました。
裁判所でも意見が揃っていない
上記判決から、裁判所でも意見が揃っていないことがわかります。このことから、合理性、正当性があっても、大量に出願することにはリスクがあります。
リスクを避けるために企業として大量の商標を保有する必要がある場合、代理人に相談し、生産や経営上の必要に応じて、出願の量や出願期間を合理的な計画に基づいて出願することをお勧めいたします。また、日常管理の中で商標の使用証拠等の保存についても重視することもお忘れなく。