無効審判において引用商標が不使用の場合、知名度の高い後願商標を排除できない?

SUPOR


無効審判の請求人は引用商標に関する実際使用証拠を提出しなかった場合、引用商標が先行登録されただけで、保護されるべきでしょうか?

この問題を回答する前に、まず下記の判例を見てみましょう。

  • 係争商標:SUPOR
  • 引用商標:SUBOR

広東益華集団投資有限公司(以下「益華社」という)は、主としてゲーム機の販売をしています。第11類において先行登録された2件の文字商標「SUBOR」と4件の図形と文字の組み合わせ商標をもって、浙江蘇泊爾株式有限公司(以下「蘇泊爾社」という)が類似商品において登録された商標「SUPOR」に対し、無効審判を請求しました。

中国商標審判委員会の意見では、商標自身の類似性に鑑み、係争商標「SUPOR」は引用商標の主要なる部分「SUBOR」と類似商標に該当すると判定し、係争商標を無効とすると判定しました。蘇泊爾社は不服があり、北京知的財産権裁判所に提訴しました。

一審では、蘇泊爾社は北京知的財産権裁判所に第1106類似群と第1110類似群における係争商標に関する大量の使用証拠を提出しましたが、北京知的財産権裁判所が審査を経て、係争商標「SUPOR」と引用商標の文字部分「SUBOR」と類似商標に該当すると判定し、商標審判委員会のの裁定を維持しました。

蘇泊爾社は一審結果に不服があり、北京市高級人民裁判所に上訴しました。蘇泊爾社の主張は、「商標類似性の認定は、単に商標自身の類似性だけを考えるべきではない。本件の場合、益華社が不服審判及び一審、二審の段階で、引用商標に関する使用証拠を一切提出していない状況のもと、裁判所は係争商標の使用証拠によって証明された知名度、主観的意図なども総合的に考えるべきだ」とのことでした。また、蘇泊爾社は二審の段階で、更に大量の係争商標に関する使用証拠と市場シェアを証明する証拠を追加提出しました。

北京市高級人民裁判所は審査を経て、下記のように判定しました。 中国では、先行出願を原則にしているが、商標の本質といえば、使用である。商品や役務の出所を示す価値を生かさなければならなく、商標所有者が合法的に登録された商標を実際の生産経営活動に投入することを励むべきで、商標の登録制度によって、ある主体が勝手に社会の公共資源を占用し、登録商標を使用しないにもかかわらず、ほかの正当な経営者を妨げ、わが国の市場経済の発展と反映に影響を与えることを励むべきではない。商標権利者の取得した登録商標を商品の生産・流通のプロセスに投入し、商標としての価値を生かし、社会公共資源の浪費を避けるように、導くべきである。
また、商標の類似性判断は法的問題のため、商標権確定の行政プロセスでは、標識の類似性、商品の類似性、かかる商標の顕著性と知名度、関連公衆の注意力、商標所有者の主観意図などを、きちんと考慮すべき要素として総合的に考えてから判断を下すべきである。

結果として、北京市高級人民裁判所は蘇泊爾社の上訴主張を認め、蘇泊爾社の提出した第1106と1110類似群における係争商標の大量の使用証拠に基づき、係争商標と引用商標は類似商標に該当しないと判断し、係争商標の登録を維持しました。

本件では、商標使用制度を設立した本意は、商標の使用を励むためだと北京市高級人民裁判所の考えでした。先行商標の所有者がその引用商標の実際使用状況に対し挙証できないからには、ある意味で、その商標を守る正当性を失っていました。それに対し、後願の係争商標の所有者には悪意がなく、合法的な登録商標権に基づいて、係争商標を大量に使用し、かつ比較的高い知名度を形成させました。このような状況のもと、双方商標は標識自身が似ているにもかかわらず、双方の商品、顕著性、知名度及び悪意の状況を総合的に考えて、北京市高級人民裁判所は、係争商標はその指定商品において使用される場合、引用商標と混同・誤認されない結論を出しました。

(北京恵利爾商標代理有限責任公司)

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