カーネルおじさんの悲劇!ケンタッキーが中国で商品名を変えた理由とは?
中国で話題!あの「骨なしケンタッキー」の名前が変わった謎に迫る
中国人は鶏肉が大好き。大手バーガーショップチェーンでも、明らかに日本では見たことがないようなチキン系のメニューが充実していたりする。そんな中国でケンタッキー・フライド・チキン(以下、ケンタッキー)が大人気なのは当然だが、そのケンタッキーについて、ここ最近人々の間で話題に上っている1つの謎がある。それは主力商品「骨なしケンタッキー」の名前がなぜ変わったのか、というもの。実はこの問題、マーケティング戦略云々ではなく、商標に関する問題が絡んでいた。
原因は商標問題!「骨なしケンタッキー」の商品名につかった中国語とは?
この「骨なしケンタッキー」、中国では当初「上校鶏塊」という商品名だった。「鶏塊」は字から大体ご想像頂ける通りぶつ切りの鶏肉、そして「上校」はカーネルおじさんの「カーネル」を意味している。
しかし中国のある弁護士が2012年、国家工商行政管理総局商標評審委員会にこの「上校鶏塊」の商標取消を求める申立てを行った。中国の大手ポータルサイト捜狐に2016年6月6日付で掲載された記事などによると、「上校」という用語が軍隊の階級を表す用語であるため、これを食品に使用することは軍の栄誉を尊重しておらず、また中国の「兵役法」などに定められている”軍人以外の者が士官の身分を表す称号を無断で使用してはならない”という規定にも反している、というのが申立ての理由らしい。
思わぬ事態はアメリカと中国の「文化の違い」がもたらした
この問題にはアメリカと中国の、文化及び言葉に対する認識の差異が影響している。
ケンタッキーの創業者であるハーランド・デーヴィッド・サンダースは「カーネルおじさん」としてブランドの顔となっているが、この「カーネル」というのは名前の一部でもなんでもなく、ケンタッキー州に貢献したことで州知事から与えられた「ケンタッキー・カーネル」という名誉称号である。ちなみにこのカーネルという言葉、「大佐」という意味ではあるが、カーネルおじさんのケースの場合、「ケンタッキー州を盛り上げてくれてありがとう。」ということで与えられた称号に過ぎず、軍隊とは全く関係していない。
しかし中国では、国旗、軍旗などの使用には厳格な規定があり、商業目的での使用は認められない。このため、商標評審委員会は、「上校」という言葉を食品に使用することは社会に悪影響を与え、中国商標法第十条第1項8号の規定にも反するという裁定を下した。
既にケンタッキーの「上校」という商標は第29類の食品の区分では無効とされており、現在、骨なしケンタッキーは「黄金鶏塊」と名前を変えて販売されている。
中国語への安易な翻訳がリスクに?中国語商品名はネーミング精査が不可欠
ケンタッキーが「上校」商標を登録したのは1993年で、当時の経緯は今となっては定かではない。
しかし、中国語の商標を決める際、不用意に「カーネル」を直訳してしまったことが後々思わぬ事態を招いたこの事件、我々にとっても他人事ではない。
中国に進出する企業は、適切な中国語のネーミングと精査を行ったうえで商標出願することが重要であることを改めて教えてくれるよい例であろう。