先使用 商標

はじめに(中国『商標法』第15条について)

中国『商標法』第15条の立法目的は、特定の関係を通じて他人商標の存在を知って、奪い取ろうとする行為を禁止し、信義誠実の原則及び公平な競争秩序を守ることにあります。本文においては、中国商標法第15条第2項における「先使用」の認定に当たって、主に下記三点から考察したいと思います。

一、「先使用」は、商標としての使用であるべき

商標としての使用とは、商品の出所を識別するという商標の機能を発揮させるために、商品の包装、容器等にマーク等を付して使用することなどです。商品がまだ市場で流通されていなければ、たとえ既に営業許可を取って原材料を購入したとしても、商標としての使用と認められません。他に、商品名称や企業名称として使用されたとしても、商標の機能を発揮することはできないと思われるため、商標としての使用と認められません。

また、実務では、他人が実施した商標権者の意志に反しない商標の使用、即ち商標の「受動的な使用」が、商標としての使用として認めて良いか否かについて議論を呼びましたが、最終的に商品の出所を識別するという商標の本質に回帰し、認定するという結論に至りました。つまり、ある標識が商標になるか否かは、「商標権者による主動的な使用」か、「他人による受動的な使用」かに関係なく、生産者とその商品との間に当該標識を介して特定の関連性が確立されているかにかかっています。

二、「先使用」は、原則として中国国内での使用であるべき

商標権は属地主義なので、中国『商標法』第15条第2項の「先使用」も原則として中国国内での使用であるべきです。このことから、第15条第2項の「先使用」を主張する場合、係争商標の出願日前に中国国内で商標を使用した証拠を提示することが求められます。

また、現在、越境ECの小売輸入業務の急速な発展に伴い、中国国内の消費者が越境ECプラットフォームを通じて海外から商品を購入することが見受けられます。一見して商品が中国国内の市場に流通されておらず、商標としての使用とは認められませんが、越境EC販売の行為から、商品の流通は中国国内外を跨いでおり、越境EC販売の結果から、消費者は中国国内にいます。つまり、越境ECの小売輸入業務において、商標が商品の出所を識別するという役割を果たしていることになり、商標の影響力が中国国内まで及んでいますので、商標としての使用と認められます。もちろん、越境EC販売は合法性の要求を満たす必要があり、要求を満たしていない場合、商標としての使用と認定されません。

三、「先使用」の認定には、知名度を考慮する必要がない

中国『商標法』第15条第2項で保護される未登録商標が特定の関係者に対する措置のため、「先使用」の立証を厳しく要求することは妥当ではありません。そのため、商標の知名度の立証を求めず、商標出願人は特定の関係者が商標を先に使用していたことを知っていたことさえ証明できれば、「先使用」が認められます。

ここでご注意いただきたいのは、商標出願人は特定の関係者が商標を先に使用していたことを知っていたということは、「明らかに知っている」との立証が要求されます。商標出願人は、商標の使用によって、それを知ることが推定できたとしても、「明らかに知っている」という立証ができなければ、第15条第2項の規定を適用することはできません。

参考資料(中国商標法第十五条)

授権されていない代理人又は代表者が自らの名義により被代理人又は被代表者の商標を登録し、被代理人又は被代表者が異議を申し立てたときは、その登録をせず、かつその使用を禁止する。

同一又は類似の商品について登録出願された商標が、他人により先使用されている未登録商標と同一又は類似し、出願人は、当該他人と前項の規定以外の契約、業務関係又はその他の関係を持っていることにより、当該他人の商標の存在を明らかに知っていて、当該他人が異議を申し立てたときは、その登録をしない。

 

(北京恵利爾知識産権信息諮詢有限責任公司)

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