前回は、立体商標の識別性について解説しましたが、今回は色彩のみからなる商標及び音商標の識別性について解説したいと思います。
それでは、詳細を見てみましょう。
色彩のみからなる商標について
色彩のみからなる商標は、通常の色付き商標と異なり、2つ以上の色を特定の方法で結合した商標を指します。その保護範囲は特定の方法で結合された色そのものに限られ、商標見本に表示される形状は保護の範囲外です。また、色彩のみからなる商標は、商品と包装の全体または一部に使用でき、サービスを提供するために使用する施設・機械等においても使用できます。ちなみに、中国は日本と異なり、単色の色彩のみからなる商標の登録を認めていません。
色彩のみからなる商標の使用時には、その色が商品自体、包装またはサービスを提供するために使用する施設・機械の装飾等と認識されやすいです。そのため、色彩のみからなる商標の識別性の認定には難点があります。理解を深めるため、CNIPRが例を挙げて説明しました。
例えば、「電気式グラインダー」において
を出願する場合、緑色と黄色の組み合わせが電気式グラインダーの汎用色なので、関連公衆がこの色の組み合わせについて、製造元を区別するための標識とは認識しないのが一般的です。
音商標について
音商標は、音そのもので構成されるもので、音楽、音楽的な音、自然の音、人間・動物の声、並びにこれらの音声の組合せで構成することができます。音声なので、商品自体で出す音声や、背景音楽、広告宣伝用語等と認識されやすく、製造元を区別するための標識に認識されないのが一般的です。そのため、音商標の識別性の認定にも難点があります。たとえ特別な音声であっても、当然、商標としての識別性を有する訳ではありません。CNIPRが識別性に欠ける音商標の例を6つ挙げました。
1.出願商標が商品・役務の内容、消費者ターゲット、品質、功能、用途及びその他の特徴を表す音声である場合
出願商標が商品・役務の内容、消費者ターゲット、品質、功能、用途及びその他の特徴を表す音声である場合、関連公衆がこのような音声を聞くと、商品・役務の特徴をアピールしていると認識されやすいため、製造元を区別するための標識だと認識しないのが一般的です。
例えば、ピアノ演奏を楽器において出願・使用する場合、幼児の笑い声を乳幼児用ミルクパウダーにおいて出願・使用する場合、クラッシック音楽をコンサートの企画・運営において出願・使用する場合、犬・猫の鳴き声をペット飼育において出願・使用する場合等。
2.出願商標が商品の使用、サービスの提供中によくある音声である場合
出願商標が商品の使用、サービスの提供中によくある音声である場合、関連公衆がこのような音声を聞き逃しやすい、または、よくある音声として認識されやすいため、製造元を区別するための標識だと認識しないのが一般的です。
例えば、ワインボトルを開ける際の「ポン」「バタン」という音を「ビール」「赤ワイン」において出願・使用する場合、通貨検知器がお金を数える際の「ザー」という音を「銀行」において出願・使用する場合等。
3.出願商標が業界内において、通用またはよく使用される音楽である場合
出願商標が業界内において、通用またはよく使用される音楽である場合、関連公衆がこのような音楽を聞くと、よくある背景音楽だと認識されやすいため、製造元を区別するための標識だと認識しないのが一般的です。
例えば、結婚行進曲のメロディーをウェディングの企画・手配において出願・使用する場合等。
4.出願商標が簡単過ぎる、または、複雑過ぎる音声である場合
出願商標が簡単過ぎる、または、複雑過ぎる音声である場合、関連公衆がこのような音声を聞く際、単なる効果音、音楽と認識されやすいため、製造元を区別するための標識だと認識しないのが一般的です。
例えば、「エリーゼのために」という曲の全曲を幼稚園において出願・使用する場合等。
5.出願商標が通常のイントネーションまたは簡単なメロディーで歌ったり、読んだり、話したり、呼びかけたりするフレーズ等である場合
出願商標が通常のイントネーションまたは簡単なメロディーで歌ったり、読んだり、話したり、呼びかけたりするフレーズ等である場合、関連公衆がこのような音声を聞く際、広告宣伝用語またはよくある表現だと認識されやすいため、製造元を区別するための標識だと認識しないのが一般的です。また、特定の自然人が独特な音色・イントネーションでフレーズを読んだり、話したりしても、その音色・イントネーションが独特だからという理由で音声に識別性があるとは限りません。
例えば、簡単なメロディーで「恭喜你发财」(中国春節によく使われる挨拶)を歌う場合、通常のイントネーションで「いらっしゃいませ」を話す場合等。
6.出願商標が上記以外の製造元を区別する機能を果たせない音声である場合
出願商標が上記以外の製造元を区別する機能を果たせない音声である場合、音商標は識別性に欠けると思われます。
追記
なお、非伝統的商標に識別性があるか否かを判断する際、商標自身の構成、指定商品・役務、関連公衆の一般的な理解、業界内の商標に対する認識及び標識の構成要素、ビジュアル効果、使用方式等を総合的に考慮すべきです。
出願人としては、充分且つ有力な使用証拠を用意し、非伝統的商標が長期使用によって、商標としての識別性を獲得できたこと、非伝統的商標と指定商品・役務との関連付けを証明する義務があります。