

はじめに
中国の商標制度は登録主義を採用しているため、実際に商標が使用されなくても登録できます。しかし、商標の登録出願件数及び登録保有件数の増加に伴い、大量の不使用登録商標が登録簿に留まることで問題が生じ、商標の件数が多ければ多いほど、新商標の登録が難しくなります。第三者が新商標を登録させるため、先行登録に対して不使用取消審判を提起し、障害となる登録商標を排除することが一般的な手段となっています。その影響で、近年、不使用取消審判の件数が大幅に増加しています。
不使用取消審判が提起された場合、正当な理由を説明できない、かつ、有効な使用証拠も提出できないと、登録商標が取り消されます。では、商標権利者として、不使用取消審判を提起された際、どのように応答すべきでしょうか。本文章は、不使用取消審判の応答に関する注意点等について、Q&Aの形で2回に分けてご紹介したいと思います。
Q:いつからいつまで、どこでの使用証拠を提出すべきですか?
A:商標権利者、即ち不使用取消審判の被請求人は、不使用取消審判が請求された日から遡って3年の間に中国(香港、台湾、マカオを除く)で使用した証拠を提出すべきです。遡って3年という期間については、不使用取消審判に関する答弁通知書に明記されますので、ぜひご確認ください。
Q:応答期間はいつまでですか?
A:不使用取消審判に関する答弁通知書を受領した日の翌日から計算し、2ヶ月以内に応答する必要があります。応答期間の延長はできません。
Q:応答しなければ、どうなりますか?
A:登録商標が取り消されます。請求人が一部の指定商品・役務に対して不使用取消審判を請求した場合、請求された一部の指定商品・役務において登録商標が取り消されます。
Q:使用証拠を提出しないとダメですか?
A:『商標法実施条例』第六十六条第一項の内容によって、商標権利者が不使用取消審判に関する答弁通知書を受領した日より2ヶ月以内に、使用の証拠資料を提出せず、又は証拠資料が無効で、かつ、不使用の正当な理由がない場合には、商標局はその登録商標を取り消します。
また、『商標法実施条例』第六十七条の内容によって、不使用の正当な理由とは、(一)不可抗力、(二)政府政策による制限、(三)破産清算、及び(四)商標登録権者に帰責できないその他の正当な事由になります。
上記のことから、不使用の正当な理由があれば、使用の証拠資料を提出しなくても登録商標は維持できます。しかし、実務では、不可抗力等の影響で商標が使用できないということは、ほとんどありません。有効な証拠資料を提出することの方が不使用取消審判の一般的な対応方法です。
Q:商標を使用する人は、必ず商標権利者でなければなりませんか?
A:商標権利者自身による使用証拠のほかに、ライセンシー及びその他の商標権利者の意思に背かない商標の使用者による使用証拠も認められます。使用者がライセンシーの場合、使用許諾関係が存在することを証明する必要があります。
Q:どのような資料が商標的な使用として認められますか?
A:商標を商品の本体、包装、容器、取引書類、広告宣伝等、または、商標を役務の提供場所、書類資料、テレビ・インターネット等のメディア、展示会・博覧会等に使用して、商品・役務の出所を識別する行為が、商標的な使用となります。
一方、商標登録情報の公布や商標権利者による登録商標の専用権保持に関する声明、単に譲渡や許諾行為があるのみで、実際に使用されていない等のような行為は、商標的な使用と認められません。
Q:商品の販売契約書を提出したが、なぜ認められなかったのか?
A:単文孤証、または、商標権利者自身が制作・印刷した資料などは証明力が低いため、認められない可能性が高いです。単に販売契約書を提示した場合、販売意思があることは証明できますが、商品が実際に販売されたことを証明できません。従って、商標が実際に使用されたことも証明できないことになります。
商標は、商品・役務の出所を指し示す機能を有するもので、経営活動で使用されないと、ただの標識に過ぎません。そのため、標識を商標として経営活動で使用したことを証明することが重要です。他の経営者と取引する際、契約書の他に発注書、納品書、領収書、販売される製品の資料(製品の写真や取扱説明書、カタログ、ネット販売の情報、販売記録等)、提供されるサービスの資料(店舗の内装やスタッフの服装、チラシ、価格表、販売記録等)、消費者のコメント等もあるはずです。確かに製品販売が行われたことを証明するため、販売契約書だけでなく、販売に関わる一連の証拠も提示する必要があります。
Q:使用証拠に関して、他の注意点がありますか?
A:提出された証拠資料には、取消がかけられた登録商標、使用者(商標権利者またはライセンシー)の名称、使用日(取消請求日から過去3年の間)が示されていなければ、有効な使用証拠として認められません。商標の使用地域は中国でなければなりません。また、指定商品・役務においての使用でなければ、認められないリスクがあります。
まとめ
以上が不使用取消審判の応答に関する注意点となります。次回はいくつか例を挙げて、不使用取消審判の実務について、更に詳しくご説明したいと思います。楽しみにおまちください。
(北京恵利爾知識産権信息諮詢有限責任公司)