商標 乗っ取り

中国商標の類否の判断

中国では、商標の類否を判断する際、標識自体の文字構成外観発音意味等を比較して判断するのが一般的ですが、異議申立、無効審判請求等の案件では他の要素も総合的に考慮されます。

今回は、出願人の主観的な意図が考慮された事例をご紹介したいと思います。

異議申立の簡単な内容

黄氏が第30類の商品「コーヒー;茶」等において商標「煊猊狮」(発音:シュアン ニ シ、以下は被異議申立商標をいう)を出願しました。被異議申立商標が公告された後、ヘネシー社(有名なコニャック製造業者)が「HENNESSY」の中国語表記である商標「轩尼诗」(発音:シュアン ニ シ、以下は引用商標をいう)を根拠に異議申立を提起しました。

国家知識産権局の判断は?

被異議申立商標と引用商標の発音が同じとはいえ、文字構成、外観、意味が完全に異なるため、単純に商標審査基準に基づいて判断すれば、類似商標に該当しないと思われます。

しかし、審査によって、黄氏が被異議申立商標の他にも、他人の有名ブランドの発音と同じような商標を多く出願していたことが分かりました。

例えば、「相耐儿」(「CHANEL」の中国語表記「香奈儿」と同じ発音)、「仁投玛」(「Rémy Martin」の中国語表記「人头马」と同じ発音)、「禄亿葳登」(「LOUIS VUITTON」の中国語表記「路易威登」と同じ発音)、「嫡傲」(「Dior」の中国語表記「迪奥」と同じ発音)、「犇迟」(「Mercedes-Benz」の中国語表記「奔驰」と同じ発音)等があります。これらのことから被異議申立商標の発音と引用商標の発音が同じだということは偶然とは考えられません。

黄氏が故意に他人の有名ブランドを模倣し、他人のブランドにただ乗りしようとする悪意は明らか経営活動の中で意図的に混同を生じることが考えられます。このような場合、単に類否判断規則を適用するだけでは、審査基準を回避できるような「反則すれすれ」の行為を阻止できず、ただ乗り目的の不正登録を実現させてしまいます。そのため、本案件において、国家知識産権局が黄氏の主観的な意図を考慮し、標識の類否判断基準を厳格に適用し、被異議申立商標と引用商標が類似商標に該当すると認定しました。

まとめ

上記案件は、他人ブランドへのただ乗りを抑止する典型的な異議申立案件です。標識自体の類似性は低いとはいえ、先行商標の高い知名度を利用しようとする出願人の悪意が混同の可能性を高めるという事実を考慮し、審査基準を厳格に適用することによって、ただ乗り目的の不正登録を抑止できました。

 

(北京恵利爾知識産権信息諮詢有限責任公司)

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