中国でパルファン・クリスチャン・ディオールの立体商標登録に光明、今後の審査の指針となるか
音や色彩、ホログラム、立体など、現在ではさまざまな商標出願の形態が認められているが、それぞれの審査基準を満たすことはかなり難しく、登録のハードルはそれなりに高いものとなっている。
特に液体の瓶のような容器については、「その業種では普通に使われる形状」ということで顕著性(識別性)を欠くと判断されるケースが少なくなく、これは日中いずれでも同様である。
そのような中、仏パルファン・クリスチャン・ディオールが国際出願した香水瓶の立体商標について中国で登録の可能性が出てきたことが注目を集めている。
パルファン・クリスチャン・ディオール(PCD)はクリスチャン・ディオールのコスメティックラインとして1947年に創設され、現在はLVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)傘下にある一流ブランド。
2018年5月10日付の中国知的産権報によると、話題となっているのは、以下の商標(国際出願番号:1221382)である。
(※出所:世界知的所有権機関ウェブサイト)
PCDは2014年8月、上掲の立体商標をマドリッド・プロトコル経由で各国に出願した。
2015年7月、中国工商行政管理総局商標局(当時)は、これを顕著性の欠如を理由として香水・化粧品など全ての指定商品について拒絶。PCDの不服申立ては認められず、結果として行政訴訟にもつれ込んだ。
PCDは、①出願商標が色彩を付した立体商標であるにも関わらず、中国商標局はこれを一般的な商標として取扱うなど、そもそも審査の判断基準が誤っていたこと、②出願商標は特徴的且つ中国市場において広く宣伝・使用しているもので、多くの国でも既に商標登録されていることの2点を主張したが、一審・二審ともその主張は認められなかった。
そこで裁判は最高人民法院(日本の最高裁判所に相当)まで持ち越される。最高人民法院が下した判決は、立体商標としての出願を一般的な商標と取り違えるといった商標局による審査手続の不備を認めて一審・二審の判決を取り消し、使用による顕著性の獲得や審査基準の一貫性などの要素も十分に加味した上で、商標評審委員会に再審査を求めるというものであった。
中国国内では本件を「マドリッド・プロトコルなどの国際公約の適切な履行と国外出願人の権利保護を体現したもの」と報じられているが、有識者からは、今回の最高人民法院の判決が、商標局や裁判所の今後の類似案件の処理において重要な指導的意義を有する点も指摘されている。
(日本アイアール A・U)