映画配給会社が約1ヶ月で2,000件近い商標登録出願、商標法的には許される?
中国で目下メガヒット中のアニメ映画「Ne Zha(英題)」の配給会社が約1ヶ月のうちに当該映画に関連する2,000件近い商標登録出願をしたことが明らかになり、このような大量出願が商標法に触れることはないのかと議論を呼んでいる。
2019年9月4日付の経済観察報によると、話題の的となっているのは北京光線伝媒体股份有限公司(以下、光線伝媒)。
今年7月下旬に公開した「哪吒之魔童降世(英題:Ne Zha)」が公開1ヶ月弱で興行収入40億元を突破し、中国国内のアニメーション作品としては最大のヒット作となっている。
光線伝媒が大量の商標登録出願を開始したのは8月上旬で、傘下の映画関連会社を通じて1,818件の商標を出願した。これらはほぼ全て登場人物の名前など、映画「Ne Zha」に関係する商標。ところがこの事態が明るみに出てから、業界ではこのような大量出願が商標法に違反しているのではという声が出始めている。
近年、中国で商標を大量保有する行為は一般的に悪意に基づくものと考えられがちだ。合理的な理由なく大量に商標登録する行為は、商標の高額売買を目的としていると捉えられているからだ。
しかし、光線伝媒は「Ne Zha」の配給会社であり、商標登録に正当な理由があることは明白。悪意ある大量出願と捉えるのはお門違いであろう。
もう1つの争点は、このアニメの主人公「哪吒(ナタ)」が元々中国の神話に出てくる少年神であり、その法具も中国では広く知られているため、光線伝媒がこれらを商標登録することはできるのか、という点だ。これに対し専門家は、有名な3つの法具を除き、他の法具はアニメオリジナルであるため、商標登録には問題ないと語っている。また少年神の名前である「哪吒」についても、孫悟空をはじめ、他の神話上の登場人物の名も商標登録されていることから本質的に問題はないだろうと他の専門家が見解を述べている。ただ、「哪吒」は既に中国のテレビ局が商標登録しているため、光線伝媒の出願の多くが拒絶されるであろうということだ。
さらに、このような大量出願・登録の中には防衛的な目的でされるものも含まれるため、三年間使用しない商標については、商標法の規定に則り不使用取消請求をかけられるリスクがある点も指摘されている。
また当該出願は映画の上映開始から約2週間後にされているため、予想を超えた大ヒットに後押しされて後から出願を思い立った可能性も指摘されており、「本来なら上映前に出願しておくべき」との冷静な意見も見られている。
(日本アイアール A・U)