ここ数年、中国国家知的財産権局は、商標審査期間短縮化に取り組んでいるため、以前と比べ、現在の平均審査期間が大幅に短縮されました。政府の目標では、2021年末に平均で4ヶ月に短縮される見込みであったにもかかわらず、プラクティス上では、僅か3ヶ月余りで審査結果が出たという実例さえ現れました。商標出願審査期間の短縮化は、商標登録までの時間を短縮できるため、出願人にとって歓迎されますが、物事には常に別の側面が存在し、優先権主張を伴う出願にとって、新しい問題を引起しました。この記事では、2つの事例を通じて、プラクティス上で発見された問題を紹介し、その対策を考えてみたいと思います。
優先権主張出願とは?
優先権を伴う出願において、その出願日が第三者商標の出願日より後であっても、優先権日が第三者商標の出願日より先である限り、第三者商標に対抗できます(備考:本文での第三者商標とは、その出願日が優先権を伴う商標の出願日より先、且つ優先権日より後の同一又は類似商品/役務における同一又は類似商標を指す)。
商標の審査期間が現在ほど短期間ではなかった時期に優先権を伴う商標出願を行った出願人は、6ヶ月間の法定期限ぎりぎりで商標出願を提出した場合でも、まだ第三者商標が審査されていなかったため、第三者商標の登録を阻止できたというのが一般的でした。
しかし、商標出願における審理期間が4ヶ月に短縮される中で優先権を伴う商標出願においては、以下のような問題が生じています。
優先権主張出願に生じた問題の一つ目とは?
一つ目の問題は、優先権日が先であるにも関わらず出願日が第三者商標の出願日後となったため拒絶される可能性が生じます。
実例として、第42070065号商標(以下は係争商標という)の出願審査において、国家知的財産権局が4件の商標を引用しましたが、4件の引用商標のうち、第41221160号(出願日:2019年9月23日)と第41348323号商標(出願日:2019年9月27日)の出願日は、係争商標の優先権日2019年7月22日より後です。もちろん、不服審判を通じてこの2件の引用商標を克服することができましたが、出願人にとって、登録までの時間と経済的コストが増えたことは言うまでもありません。
6ヶ月の優先権期限が間近に迫る中で中国での商標出願を進める外国出願人は多いと思われます。以前、このような方法で出願することは基本的に問題がありませんでしたが、商標出願審査期間の短縮により、6ヶ月あれば、第三者商標が実体審査を通過し、初歩査定され、優先権を伴う出願の方が却下されるという可能性が生じます。
優先権主張出願に生じた問題の二つ目とは?
二つ目の問題は、優先権を伴う出願が拒絶を受けず、順調に審査を通過することもありますが、第三者商標と併存してしまう可能性が生じます。
実例として、GALVION社が2020年4月23日に第45697090号「GALVION」商標を出願しました。当該商標の優先権日が2019年10月24日であり、2020年12月6日に初歩査定されました。しかし、2019年12月10日に、同商標が第三者より同一または類似商品において出願され、2020年5月27日に初歩査定されました。幸いなことにGALVION社が当該第三者商標の存在を発見し、異議申立を通じて無効することができましたが、経済的コストも増加しました。
三つの対策
商標出願の審査期間短縮化に伴う問題ですので、今後国家知的財産権局は改善策を講じると思われますが、前述の問題が既に発生したことに鑑み、優先権を伴う出願の出願人にとって、経済的コストを減少させるために対策を講じることをお勧めしたいと思います。
考えられる対策として、
一つ目は、たとえ優先権を伴う出願であっても、早めに中国での出願手続きを進めることをお勧めいたします。中国での出願日が早ければ早いほど、第三者商標の登録を阻止できる可能性が高くなります。
二つ目は、出願前又は出願後に類似商標調査を行い、第三者商標の有無を把握することにより、異議申立や無効審判等の対策を取ることができます。
三つ目は、第三者商標が審査の結果を待っている状態であれば、出願人は国家知的財産権局に対し、自身の優先権に基づき第三者商標の却下を求めるという意見書を提出することができます。出願人の優先権が有効と認定されれば、国家知的財産権局は自発的に第三者商標を却下する可能性が高いです。