海外商標保護制度の特徴及び申請実務(後編)

外国商標実務の解説

海外進出している企業にとっては、海外での商標保護は極めて重要です。しかし、世界中の国や地域が多く、商標制度も様々です。

前回は、アメリカ、イギリス、モルディブなどの国・地域での特別の商標保護制度について五つの特徴をご紹介いたしましたが、後編では残りの五つの特徴をご紹介したいと思います。

6.バングラデシュ、バハマ、レバノンなどの国では、商標の有効期限は10年間ではない

多くの国では商標の有効期限は10年間ですが、一部の国での商標有効期限は10年間ではなく、7年間の場合もあれば、14年間、15年間といった場合もあります。
『貿易に関する知的財産権協定』(TRIPS)第18条の商標保護期限に関する規定によっては、商標が登録してからの有効期限と登録更新された後の有効期限は7年間より短くてはなりません。そのため、明文の商標法を持つ国では、商標の有効期限は少なくても7年間です。

また、各国での商標有効期限の開始日もそれぞれです。一部の国では出願日より計算され、一部の国では登録日より計算されます。例えば、バングラデシュでの商標有効期限は出願日から7年間、ネパールでの商標有効期限は登録日から7年間、バハマでの商標有効期限は出願日から14年間、レバノンでの商標有効期限は登録日から15年間です。

7.ベトナム、アルメニア、ノルウェーなどの国では、漢字は顕著性に欠けるものだとみなされる

ベトナム、アルメニア、ノルウェーなどの国では、現地の商標審査機関は実務において、現地の消費者が基本的に漢字を読めないため、漢字商標で商品を識別することができないとの理由で、漢字は顕著性に欠けており、商標として登録できないと認定しています。

例えば、ノルウェーの『商標法』第14条における商標登録の絶対的理由に関する規定及びノルウェー工業財産権局が実務で踏まえる解釈によりますと、ノルウェーの消費者が漢字を読めないため、漢字商標を覚えるのに難があり、漢字商標を商品の出所を示す標識と看做さないため、漢字商標は顕著性に欠けると認定され、絶対的理由に違反したとの理由で現地商標局に拒絶されます。

8.日本、香港などの国・地域では、出願した商品の数が多すぎると、使用の意図が疑われる

中国では、多くの企業は自社の商標を全面的に保護するために、コア商標を全類似群において、死角の無いの防御的登録を行っています。
しかし、日本・香港などの国・地域では、出願の区分や指定商品の数が多すぎる場合、出願人には出願商標を指定商品において実際に使用する意図があるかどうかを官庁が疑い、審査意見を出します。そして、指定使用商品において、出願商標を実際に使用している、若しくは使用する計画があることを証明できる証拠を提出するように、出願人に要求します。提出できないと、出願商標が拒絶されます。

9.ホンジュラス、ケイマン諸島などの国・地域では、年金を納付する必要がある

周知の年金制度は主に特許、意匠の分野に関するものですが、個別の国では、商標についても年金を納付する必要があります。
例えば、ホンジュラス、ケイマン諸島などの国・地域では、商標が登録されてから、年金を納付する必要があります。

ホンジュラスの『工業財産権法』第93条の規定によると、登録商標の登録更新回数には制限がなく、更新後の有効期限は前回の有効期限が切れた後の10年間ですが、その前提は、商標登録者がすでに法にしたがい「年間維持税」を納付したことです。
ここでの「年間維持税」は、我々が言うところの「年金」で、強制的な税金であり、支払わないと登録更新の請求を商標局が受理しません。

10.マレーシア、インドなどの国では、商標が無効になっても、商標権を取り返すように請求することができる

マレーシア、インドなどの国では、商標は登録更新の手続きが行われないために無効になった場合、商標権を取り返すように請求することができます。

マレーシアの『商標法(1976年)』第41条(2)、(3)における商標登録更新に関する規定によると、規定期間内で登録更新を行わず、有効期限が切れた後の1年間以内で、商標権を取り返すように請求することができます。

(北京恵利爾商標代理有限責任公司)

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