商標権の取得と行使は、信義誠実の原則を守るべきです。

当事者は信義誠実の原則に反し、悪意により取得した商標権をもって、他人の正当な使用行為に対して権利侵害の訴訟を提起することは、他人の合法的権益に損害を与えるだけでなく、公正な競争秩序を乱し、権利濫用に該当します。裁判所は、通常このような訴訟請求を支持しません。

判例

判例をご覧ください。

周大福会社(以下は被告という)は、2006年に「骄人」シリーズのダイヤモンド製アクセサリー製品を発売し、大量に使用・宣伝を行った後、当該製品と標識「骄人」は、既に高い知名度を有しています。被告はECサイトにおいて、「骄人」シリーズの指輪とネックレスを販売しています。

一方、個人馬氏(以下は原告という)は、2008年5月6日付で第14類の商品「ジュエリー」で第6703145号商標「jiaoren骄人」(以下は係争商標という)を出願し、登録になりました。

その後、原告は被告の前述ECサイトでの販売行為が自分の商標権を侵害したという理由で裁判所に提訴しました。

第一審は、周大福会社の使用行為の正当性を認め、馬氏の訴訟請求を却下するという判決を出しました。馬氏は、第一審の判決を不服として上訴しました。

第二審の判決において、裁判所は、原告の請求を却下し、第一審の判決を維持した上で、以下の意見を述べました。

判決 一つ目

一、下記4点を理由として、原告が係争商標を出願した行為は、信義誠実の原則に違反しました。

1.両商標の類似性から、原告の後願商標「jiaoren骄人」と被告の先行使用標識「骄人」は、文字構成、デザインと外観等において類似しています。

2、被告は2006年から、既に「骄人」製品を発売し、大量の使用と宣伝によって、高い知名度を有するようになったという状況の下で、原告が被告の「骄人」と類似した係争商標「jiaoren骄人」を出願する行為は、善意であるとは言い難いです。

3、商標の使用において、原告が提出した証拠は、係争商標が登録後、それに対し使用許諾を行ったことを証明するだけで、係争商標が許可商品において商標性を満たす使用とは証明できません

4、原告における他の商標の出願状況から、原告は30件以上の商標を出願しました。これらの出願商標は、それぞれ異なる区分と業界に属し、そのうち、第三者の知名度の高い商標の外観と類似し、その区分が同一または類似であるものがあります。原告はこれらの商標に対し誠実な使用意図があることを証明できない、またはその出願目的に対して合理的な解釈をしていないため、これらの出願は、不正な大量出願に該当します。

判決 二つ目

二、原告が被告に対し提訴した行為は権利濫用に該当します。

1、本案以前の発効済みの先行判決は、原告の係争商標の出願前、被告は既に「骄人」をシリーズ製品名として使用していたため、先行権利があると認定し、原告の訴訟請求を却下しました。それにも関わらず、原告は再び同じ理由で被告の販売行為に対し、本件訴訟を提起したことは、善意であるとは言えません

2、原告が係争商標を出願したことは、信義誠実の原則に違反し、提出した証拠は係争商標に対して誠実な使用意図または使用事実があることを証明できません。このような状況にも関わらず、原告は「骄人」を正当に使用している被告に対し、権利侵害訴訟を提起し、賠償を要求することは、明らかに権利濫用行為に該当します。

以上のことから、被告が関連製品に「骄人」標識を使用する行為は、原告の商標権への侵害に該当しません。原告が悪意により取得した商標権被告の正当な使用行為に対して権利侵害の訴訟を提起した行為は、権利濫用に該当します。

まとめ

上記の判例の意義は、「悪意により取得した商標権をもって他人の正当な使用行為に対して権利侵害の訴訟を提起する行為は、権利濫用を構成する」ということを明確にすることで、商標権利者が信義誠実の原則に基づき、正当な目的のために権利行使を行うことを促すだけではなく、正当な使用行為に対して法律保護を提供し、権利濫用行為に対して規制を行い、市場競争秩序を守ることも明らかにしました。

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